
/「建築」と「インテリア」と
きっと、「素敵な部屋で暮らしたい」という夢が無い人はいないですよね。優先順位や質の差はあるとしても。
私も昔からインテリアは大好きです。映画やドラマを見ていても、ストーリーよりファッションやインテリアばかり目で追ってしまうほど。だから、大学では建築学科を専攻しました。のですが、建築学科ではほとんどインテリアは勉強できないということが、入学してから発覚・・・学べないというよりは、建築を勉強すればインテリアはついてくる、的な発想でした。
確かに、所謂「巨匠」と言われる過去の建築家たちは外側も内側も素晴らしいデザインを残しています。(フィンランドの建築家Alvar Aaltoや、ドイツの建築家Mies van der Rohe、アメリカの建築家Charles Eamesなど数を挙げば切りがありません!)でも、そもそも建築とインテリアは「スケール」が違うので、建築が分かればインテリアも分かるという考え方は、個人的には少し傲慢かなと思っています。逆も然り。だから、両方の見聞を広めたいと思って、学生時代はインテリア誌でインターンをさせて頂きました。
/「インテリア」は難しい
”ハコ”としての家はありものを活用するしかないのですが(1から設計してもらって家を建てない限り)、インテリアは全て自分で考えなければなりません。デザイン関係の仕事をしている人もそうでない人も。
インテリアは単価も物理的なサイズも大きいので、本物志向の人ほど難しいものだと思います。
時間をかけて少しずつ揃えていく忍耐力が必要。
さらに、1人暮らしだと大きな障壁になるのが「賃貸の原状回復」問題。海外の住宅の場合、お金をかけて家を良くすればするほど退去時に価値が上がるそうですが、日本の住宅は、住みながら価値が上がるということはまずありません。
釘1本打つのも躊躇われる住宅事情では、「所有しない」・「飾らない」=「ミニマリスト」トレンドも、ある意味必然なのかもしれませんね。
/「インテリア」を因数分解
そもそも「インテリア」って何なのでしょう? ここでも生じる”ヨコモジ曖昧問題”(日本語あるある・・・)。
「内部空間をつくる」という意味での「インテリア」を、主観的でちょっと乱暴な分類ではあるのですが、ブレイクダウンして考えてみました。
>>機能性。壁や収納といった必要なものの設計。建築家の職能でもある。
>>装飾。スタイリストや「デコレーター」という専門の仕事であることが多い。
「デコレーション,décoration,décor」という意識は意外と無かったのではないでしょうか?
特に最近は「ミニマリズム」志向なので、「装飾」はちょっと嫌われがち。でも、数多の「収納」特集と無印良品のおかげで、もう収納マスターになった皆さんはそろそろ気づき初めているのではないでしょうか? 「整えたら飾ってみたくなる」ということに。
お気に入りのものや、ちょっとスペシャルなもの・・・小さな旅の思い出から、高価な一点ものの絵まで。
/部屋の1角から始めるインテリア
インテリア雑誌やインテリア特集でも、それがメインではないにせよ「デコレーション」が紹介されてはいます。でも、元の空間[space]が凄すぎたり、バジェット(予算)的にそれは絶対ムリだよ〜ってものが多かったりで、なかなかお手本にするのは難しいのですが、1年ほど前に見つけたトロント在住のKatie Merchantさんのinstagramは、”1箇所でも飾る場所があれば、スタイルは作れる”ということを気づかせてくれました。
棚の上という限られた空間と、そこに置かれた円盤の鏡が作り出す、作者と部屋の物語。
最近は彼女自身の写真だったり、inspirationの投稿も増えていますが、「たった1つの棚」の上に、さりげない日常品が絶妙なコンポジションで並べられた写真の数々に出会った時は衝撃でした。
彼女にインスパイアされて、私も部屋の1角から「飾る」練習を始めてみました。練習ってちょっと変な表現かも?アートで言うところの習作、建築で言うところのスタディといった意味合いです。季節毎に入れ替わるショーウィンドウをつくる気分で、毎月décorationを変えていきたいと思います。
Theme Color:
今月のテーマカラーは、イエロー×グリーン。フレッシュな気分で新年を過ごすために、爽やかでエネルギー溢れる色を選びました。
Flower:
去年1年、いろいろなお花を買ってみて、名前を聞いても覚えられないほど珍しいお花も飾ってみましたが、最近は昔ママが飾っていたような、ちょっと懐かしさのあるスタンダードなお花が気分だったりします。なので、今年最初に買ったお花は「チューリップ」。
Graphic:
年末年始(ホリデイシーズン)は、グリーティングカードを頂く機会が1年で最も増える季節。HERMESからは、代名詞とも言えるカレを思わせる正方形型に緻密なグラフィックのレターが届きました。しかもこれ、「HERMES版ウォーリーを探せ」になっているのです!2018年のテーマ”PLAY”を伝える、とても粋なご挨拶!飾りたくなるような、クスっと笑えるような、ウィットとユーモアに富んだカードを送れる人になりたいものですね。
Objet:
white apple
岡山のアンティークショップANTONYMによる、ちょっと不思議な石膏で作られたりんごのオーナメント。オブジェやモチーフとしての「りんご」の存在感って何なのでしょう? 寒い冬に食べたいのは、こたつみかんよりも、熱々の林檎。むせるほどシナモンたっぷりの煮たり焼かれたりした林檎が好き。
perfume
HERMESのフレグランス“Jardin sur le Toit”《屋根の上の庭》。
今年は「香り」を研究する年なので、久しぶりに香水を買いました。正確には「オードトワレ」。匂いに敏感で、自分の香りでも気持ち悪くなってしまうほど香水が苦手だったのですが、「オードトワレ」は軽い付け心地なのが特徴。しかも、この「庭」シリーズはユニセックスで、甘ったるさがないのでとても気に入っています。HERMESにとって「庭」は重要な要素の1つ。パリのフォーブール サントノレの本店をはじめ、フラッグシップには可能な限り「屋上庭園」を作るようにしているそうですよ。
green bottle
イタリアで買い付けたというヴィンテージのボトル。ドレッシングを入れて使われていたのだとか。透き通るグリーンのハンドルに、気泡の入ったボディのテクスチャも美しいのですが、何よりまんまるなキャップに目を奪われてしまいます。今にも空に飛び立ちそうな風船のような浮遊感と、今にも割れてしまいそうな危うさ。消えそうな壊れそうな儚いものって何でこんなに美しいのでしょうか?
tea coaster
祖父母の家から引き取ったコースター。年末に母方の祖父が亡くなり、ついに最期の祖父母とのお別れとなってしまいました。おばあちゃん子だったので、祖父母の家にはたくさんの思い出が詰まっています。色々と整理されてしまう前に、小さいものはいくつか譲り受けてきました。(below)
Book:
前回の投稿でもご紹介したDries Van Notenのアーカイブ本の後半(51-100)。小口がゴールドなので、平置きの側面にも魅せられます。雑誌や本などの紙ものは、日光で焼けて傷みやすいので、本棚はあまり陽が当たらない場所に置いて、頻繁に読むものだけを外に出すようにしています。
/現代版の「床の間」?
部屋の1角を「飾る」という習慣。
よく考えてみたら、実は日本人に馴染み深い文化なのではないでしょうか?
和室の消失と共に、忘れられつつある「床の間」文化。部屋を整え、床の間を飾り、来客をもてなししてきた日本人の心は忘れたくない。
お洋服もお部屋も「美しく飾りたい」のは、口下手で美人でもない私の、せめてもの「おもてなし」のつもり。(会話のきっかけが作れたらいいな。美しいものを見てワクワクしたり、癒されたりしてもらえたらいいな。)自己満足かもしれないけど。
美しく「飾る」ために、「整える」のです。相手のことを考えながら、品を損なわないバランスを考えながら。
“too much”な情報からは離れていきたいけど、適度にモノに囲まれて暮らしていきたい気分。
部屋は少し散らかっている方がいい。服はさっぱりしている方がいい。
Popeye No.150
来月もお楽しみに。