
「飾る」ために「整える」インテリア第2回。
Theme Color:
ライトブルー×アンバー(琥珀色)
爽やかさと気だるさが入り乱れる5月のイメージから。
袖をすり抜ける風に心地よい初夏の訪れを感じつつ、靄がかる黄色みを帯びた青い空(黄砂にも多かれ少なかれ影響を受けて)を眺めながら、ぼーっとお昼寝したくなってしまう毎日。何だか気だるいのは、そんな空気か五月病のせい。1年に1ヶ月くらい、そんなモチベーションの低い月があってもいいよね。時間に追われ、TO DOリストを只管こなす日常からちょっとスローダウンして、濃度と純度の高い樹液だけを追い求めて動く動物のように、感覚に素直に従ってじっくり英気を養おう。
Flower:
アリウム・シルバースプリングとブプレリウム
控えめなのに異彩を放つ花に惹かれずにはいられない。
有機的な曲線を描く茎に、放射状に小さな花をつけるのが特徴のアリウム。ネギ科。
実家では、葱は庭に自生していたため、夏に葱を買うことはなかった。(家庭菜園というにはほど遠いのでこれくらいの表現に留めておく。)成長し過ぎた葱はやがて花を咲かせ、葱坊主となってしまい、厄介者扱いされてしまうのだけど、今思えばなかなかユニークな花だったかもしれない。花はいいけど、太くなりすぎた茎が不格好だったのかな? アリウムの中でも、中心部が紫色に染まったこのシルバースプリングという品種は、市場に出回る期間が短いらしい。
1.直感で気になった花
2.珍しそうな(今まであまり見たことのない)花
3.色の組合せで既に選んだものと合う花
4.緑の花(もしくは葉物)
とにかく私が花屋で言う確立が高いのが「緑の花か葉物ありませんか?」というフレーズ。
この発言をする時は、主に2つの場合がある。メインで飾りたい花はもう見つかったがあと1本何か欲しいと思っている時か、もしくは全体的にあまり好みの花がなかった時。「ブプレリウム」は、まるいかたちが特徴的な葉っぱが気に入ったから選んだ。経験上、儚く花びらが散ってしまう花よりも、緑の花や葉物は寿命が長い。それに、あえて緑を選ぶなんてハードルが高いと思われそうだけど、飾り方の得意不得意も出にくいし、何より「日常」生活によく馴染む。
Perfume:
“PALAIS NIZAM “/ WienerBlut
目を閉じて、その香りだけで未だ見ぬ異国の景色へと誘ってくれるフレグランス。
香りの記憶というのは五感の中でも最も鮮明に残るものだとよく言われる、確かに良い印象でも悪い印象でも記憶に残っている香りというのはある。でも、Wiener Blutの香水は、どれもが今まで感じたことの全くない新しい香りで、さらに魅惑的なのが、自分の記憶の中には無いはずの景色まで想起させてくれるということだ。ギフトを買うために行ったはずのデザインショップdoinel一度嗅いでからというのも、忘れられなくなってしまったのだ。忘れられない、恋しくなる官能的な香りというものには初めて出会った。軽やかなつけ心地で、香りが変化しないうちにそっと消えていく潔さがまた良い。
Wiener Blut(ウィーナーブルート)は、アレクサンダー・ローバーによって2009年に創立された「ウィーン気質」の意をもつ、オーストリア・ウィーン発のユニセックス フレグランスブランド。ウィーンの薬局などで昔使われていたボトルをモチーフにデザインされたという美しいデザインのボトルも魅力の一つ。私が選んだ「パレ・ニザーム」という香りは、19世紀末に、フランツ・フェルディナント大公がインドのハイデラバードへ旅し、当時世界で最も裕福だと考えられていたニザーム家を訪問したことに着想を得た香りだそう。当時は植民地の時代だった、暑さも厳しいインドにいながら、石づくりの床、吹き通しの良い天高の高い空間で、涼をとりながら休息する宮殿での時間を想像しながら・・・(こんな空間かな?)
Detail:
トップノート:コニャック、サフラン、プルーン
ミドルノート:レザー、樫の木、ダヴァナ
ベース:パチョリ、シトラス
Objet:
Costume Jewerly
「コスチューム」という装飾[美]の追究。
ミニマリスト至上主義のトレンドは落ち着き、装飾にまつわるボキャブラリーが気になる気分。この気分はどこからやってきたのだろう?と記憶を辿ると、その源泉はマリア・グラツィア・キウリのDiorのオートクチュールに登場するデコラティブながらモダンなジュエリーかな。
ところで、「コスチューム・ジュエリー」という言葉は、大好きなお店「pass the baton」で教わった。パス・ザ・バトンには、Exhibitorと呼ばれる元々の持ち主がフリマ形式で出品しているもの[セカンドハンド]と、デッドストックがある。(目黒にあるアクセサリーミュージアムのデッドストックも沢山扱っているのだけど、)シンメトリーな羊のモチーフが印象的なこのバングルは、KENNETH JAY LANEのセカンドハンド。ケネス・ジェイ・レーンは、1963年に自身の名を冠して生まれたNYのジュエリーブランドで、コスチュームジュエリーとしては有名なんだとか。ヴィンテージの好きところって一言に語れないけど、マーケティングに乗らない(乗らなくてもいい余地がある)からこそ、情報を消費しながらフツーに生きていたら出会えない価値に出会えるところ。しかも、「コスチューム:衣裳」って、求められるものが実用性ではなくて、徹底的に美だけを追究した結果生まれた意匠だと思うから興味深い。もちろん、質素な「用の美」も好きだけどね。そもそも、価値観って1つじゃなくていいと思ってる。マキシマリズムもミニマリズムも両方楽しめた方が人生数倍楽しめると思うし。
Glass Napkin Ring
1個しかないナプキンリング。
今年最後の雪深いあの日、吉祥寺のアンティーク雑貨のお店、SAML WALTZ(サムエルワルツ)で見つけたスウェーデンのヴィンテージ。ナプキンリングなんて、いつ使うのかも分からないし、そもそも1個だけあっても仕方ないけど、手でつくられた陶器のような、溶けかけた氷のような、滑らかなフォルムが、ガラスの質感が、ただ美しかった。だから、暮らしの中での役割はこれから私が考えればいい。
くるんとしたお耳がアイコニックな羊のモチーフって惹かれる。(でも、羊を見ると「羊が1匹、羊が2匹…」と頭の中で数えてしまうのは私だけ?)
Book:
COS magazine 2018SS
紙メディアの編集に神は宿る。
H&Mのハイストリートライン、COSが年2回発行するオリジナルマガジンCOS magazine。最新号のカラートーンが、今月のテーマカラーにピッタリだったので、今月はこちらの本をご紹介。今でこそ「オウンドメディア」とか、ブランド発の紙媒体とかよくある話だけど、初めて紙にも魅せられたブランドと言えば、AcneとCOSだ。偶然だけど、両方ともスウェーデン生まれ、ロンドン発。Acne Paperは、ISSUE 15でお別れのコミュニケーションもなく休止。(依然その謎は解けないまま・・・知っている人がいたら教えて!)
Acneの話はさておき、COS magazineを初めてGETしたのは、北欧を1人で旅した2014年の秋。まず「本も作って売ってるんだ」と驚きながら立ち読みしてたら、“TAKE FREE”って言われて二重に驚いた。(この時買ったライラック色のモヘアのニットは今でもお気に入りだから、なんとなくライラック色のイメージなの。)この旅の後になってから知ったことだけど、海外のアートやデザインの学校って、ただ作品を作るだけじゃなくて、記録(ポートフォリオ)として本をよく作るみたい。さらに、その年の卒業制作や論文のサマリーとして「YEAR BOOK」なるものを作られるのも一般的。しかも、そういった本って、単に「本をつくる」というよりも「作品の一部」として考えているからなのか、エディトリアル・デザインと装丁がとても凝っている。つまり、プロダクトをもの単体ではなく、ストーリーある作品として伝えるために、紙を添えるのは戦略というより必然なのだろう。こうやって並べてみると、自称イヤーブックコレクターとしては、2014AW-2016SSの間の2号、欠番を埋めたくて仕方なくなってしまったのだった。
今度は蒸し暑くなってきて、憂鬱な日々は続くけど、明日からは「五月病」っていう言い訳がもう通用しない。
次回もお楽しみに。