The guide to see the world #1

“out of the scale”な物事の見方 #1

デザインの「方法」や「見方」についての情報は、影響力と実績のある方々がたくさん発信していて、十二分に誰でもアクセスできるようになった今。私はこの状況を「デザインの民主化」と勝手に読んでいるのですが、このあまりにも急速に民主化が進んでしまったがゆえに引き起こされてしまった問題もあると感じています。「オリジナル」をつくるため、自分自身の目でデザインを評価するためには、誰かの言葉の受け売りではダメ(※発信者に非はありませんので誤解無きよう)で、自分なりの審美眼[STYLE]を築き、磨いていくことが大事です。極めて冷静に世界を見る力と、時に衝動的に感覚で察知する力のバランス

料理に例えてみると、料理本でその料理のハウツーだけ知っても、いい食材を見極めて(美味しさ、生産背景…)、素材の旨みを最大限生かすための下準備や包丁さばきができないと、本当に美味しい料理は作れるようになりませんよね?逆に「下ごしらえ」さえ知っていれば、ちょっと失敗してもおかしなことにはならないですし、時に想像もしなかったとてつもなく美味しいものが生まれることだってあります。
大根の面取りやごぼうのアク抜きのように・・・地味で大変な作業なのですが、この「下ごしらえ」が何事にも大事だという信念と、地味だけど「下ごしらえ」中の食材の佇まいが好きという変態(?)な視点から、”out of the scale”な物事の見方=「デザインの下ごしらえ」というテーマでコラムを書いていこうと思います!
NYのnogle

レストランでも気になるのは厨房。こちらは、NYのメトロポリタン美術館の近くにあるグルテンフリーのベーカリー&レストランnogluのキッチン

デザインの下ごしらえ#1
 〈定点観測〉

 

Background: 背景

約7年前にブログを始めた時から、文章の読み方が、情報を求める「読み手」の目線から、伝える「書き手」の目線へと変わりました。
当初1番悔しかったのは、「かつてのXX(ブランドやデザイナー名)を思わせる〜」のように、過去を知らないと語れない記事は書くことができなかったこと。なんだか自分の書くものはすごく薄っぺらい気がしてなりませんでした。もちろん、調べればある程度は分かるので(検索大好き、chrome大好き)徹底的にリサーチするのですが、点の情報を集合させることはできても、線や面にして関連づけることは難しかった。その周辺の情報との関係性や、時代のムードまでは掴みきれず、自分の言葉にできなかった。だから、その時から、私は「定点観測」を始めました。

/気分は変わる。

ワクワクしたことも、イヤだったことも、「気分」というのは連続的に移ろってゆくもので、来年の今、今の私と同じ気分になることはきっとありません。時代も変わってゆくし、自分も変わってゆくから。
「変化」には、良いものと悪いものがありますが、残念ながら、時間の流れに抗うことはできません。数ヶ月単位の短期的なスケールで見ると落胆してしまうようなことも、数年単位の長期的なスケールで見ると必要なことだったんだなあって思うこともありますよね。
過去は変えられないから「自分だけの経験」として愛でてあげるしかない。黒歴史過ぎて目を背けたくなることにも笑

/気分は「上書き」されていく。

「気分」って一番素直な感情だと思います。でも、「気分」は、目に見えないし、残らない。
気分は次から次へと折り重なっていき、よほど明確なターニングポイントが無い限り、ぬるっと連続的に変わっていってしまいます。
さらに厄介なことに、「気分」はその時間を生きていた人にしか感じられない上に、あらゆる物事と関連づけないと語れない複雑なもの
ここで「気分」について、もうちょっとブレイクダウンしてみると、すごくパーソナルな「気分」(感情に近い)と世の中の「気分」(トレンドに近い)に分けることができますが、この2つは、まるで”ニワトリタマゴ”な関係性。どちらかだけでなく、両方の「気分」が相互に作用し、綯い交ぜになることで、私たちの行動は規定されるのです。

/だから、気分は記録する必要がある。

そんな、素直なはずなのに複雑な「気分」は、文章にしたり、何かの物に写したりして記録していかないと留めることが難しい。そして、客観的に振り返るためには、〈定点観測〉的に記録を続けていく〈アーカイブ化〉必要があります。
特に世の中の「気分」が反映されやすく、同時に上書きされていきやすいものが、ファッションやインテリア。私はずっとpinterestのボード機能を活用して定点観測を続けています。作った時は単なるwish listなのですが、数年経って振り返ると、4年前のSSはこんな感じだったんだなあ・・・と当時のムードをプレイバックすることができます。最近は、instagramの保存機能も便利そうですね。
 

 

*Reference:〈アーカイブ〉を学ぶことの重要性


BoF:Why Fashion Can’t Forget Its References
 
 ファッションをデザインする・語る上では、歴史を知ることがまず大前提だというお話。 instagramを追いかけているだけでは知れないこと、過去を知るからこそ生み出せる「新しさ」。もちろん、現代のお作法とムードに合わせてね。 ファッションに限らず、「デザイン」に関わる人はみんな肝に銘じておくべき事項だと思います。「無知の知」による「新しさ」はビギナーズラック以外無いのです。最近はなんだか「論理」や「(なんとなくの)社会性」ばかりが先行してデザインが評価されているように思いますが、真の「良いデザイン」は、的確で且つオリジナリティのあるリサーチから始まるのです。
 ちなみに、サムネイル画像はどのブランドの何のコレクションか知っていますか? 答えは、Alexander McQueen S/S 1999 (NO 13 DRESS) 。白いストラップレスのドレスを着たモデルが立つ舞台はターンテーブル。回転するモデルのドレスに、2基のロボットアームがスプレーでイエローとブラックにペイントしていくのです。そう、過去を知ると分かってくるのが、昨今もてはやされている「デジタル」を使ったプレゼンテーションが20年も前に行われていたということ。しかも、今よりずっとコンセプチュアルな見せ方で・・・



 
物に写して留めないと上書きされていく気分。
目に見えない気分だから、言葉や物に写して留めておきたい。

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